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めったに電車になんか乗らないのに
今日も夕方から都内へ。
慣れない革靴にネクタイ締めて。
昨年家具を作らせて頂いた方が亡くなった。
松屋の展示にも来て下さって
あいにくお会いすることはできなかったが、
額の注文も頂いていた。
先週お礼の電話をしたばかりだった。
額に入った遺影を見ながら、
人は額に好きな絵や写真、数々の思い出を飾り、
最期は自分が額に入って飾られて終わるのだなと
思った。
ご冥福をお祈りします。
「ツチノウツワ+キノガク展」の最終日。
仕事を2時ぐらいに切り上げ、5時からの松屋の搬出に向かう。
東武線に揺られながら、読みかけの「東京タワー」を読む。
日比谷線になり、ちょうど南千住から地下に入るあたりで、ジワリと涙腺に来た。
これ以上はやばいと本を閉じ、目を閉じる。
搬出の手伝いで「オトン」に来てもらった。
「オトン」は松屋に半世紀近く勤めていた。
とっくに引退しているのだが、
今日も昔の職場仲間の人たちとなんだか盛り上がっている。
私も「いろいろ父がお世話になりました」とか、
よくわからない挨拶をしてしまった。
「オトン」は、店内は撮影禁止なのに私との記念撮影を強行。
2人だけで写る写真なんて何年ぶり、いや何十年ぶりだろう。
松屋で展示ができたことは、すこし親孝行になったのだろうか。
小さい頃連れて来られたデパートは、
化粧品の匂いと屋上ペットショップの金魚の水の匂い。
それらはいまだに健在であるが、
デパートや銀座をとりまく環境はかなり変わったようだ。
搬出を終え近所の蕎麦屋で早い夕飯を食べ、
ラッシュの日比谷線に乗る。
これまた2人で乗る電車というのも何十年ぶりか。
「オトン」はこのラッシュに何十年も揉まれてきたのだと、
笑いながら言った。
北千住で各駅と急行に別れる。
きょう「オトン」と素直に話ができたのは、
まったく「東京タワー」のおかげだ。
親子というのは、照れくさいものだ。
子供を持って、ますます涙もろくなる一方だが、
いつか今日のような日が自分と息子にも訪れるのだろうかと
そんなことをボーッと考えながら、
改札を出た。
「ツチノウツワ+キノガク展」の最初の日曜日ということで
売り場に立ってきた。
ダイレクトな感想が聞けるので
作り手としてはとても刺激になる。
はじめて会う人、久しぶりの人、5年ぶりぐらいの人、10年ぶりぐらいの人・・・。
展示会をやることで、なかなか会えない人たちと再会できることも
実は楽しみのひとつ。
ただ、どうしてもドタバタしていることが多いので
ゆっくり話ができないのも毎回のこと。
いつも足を運んでいただいている方々には
本当に感謝です。
期待ハズレな展示にならぬよう、
これからも精進してマイル所存。
昨日仕事帰りに解体現場に遭遇。
近所の神社に付属した建物を壊している。
今朝工房に行く途中で立ち寄って、
古いガラスの入った建具を数点頂戴する。
ガラスが波打っているのでけっこう古そうだ。
解体屋のオヤジが「おまけ持ってくか?」といって
徳利の入ったダンボールを出してきた。
「野田町」「坂本屋」とある。
隣の野田市(千葉県)にあった料亭か何かのものだろうか。
それがなぜ川をはさんだ松伏町にやってきたのかは不明。
モノは誰かの所有物であることをやめた時、
壊されたり、買い取られたり、譲られたり、盗まれたり、贈られたり、
いろいろあって流れ流れていく。
今日は北越谷でやっている骨董市にも立ち寄ったが、
日本やヨーロッパなどさまざまな所から流れ着いたモノたちで
あふれかえっていた。
今日頂いた古い建具も、そのうち額になったりして
銀座なんかに飾られたりもする。
モノに履歴を聞けたなら、それはそれは面白い話が
聞けるかもしれない。
額というのは不思議なものだ。
ただの折り込みチラシなんかでも、
額に入れるとちょっと格が上がったような感じになる。
四角に囲まれてガラスに閉じ込められると
なんだか貴重な感じになる。
なんてことのない、というよりむしろ汚いような
古材を四角に組むと、不思議と面白いものになったりする。
これまでボチボチと作ってきた額を
いまは短期間に集中してたくさん作っているので
余計にいろいろ考える。
この間借りてきたゲンペイさんの本『四角形の歴史』にも
四角形の面白さ、不思議さが書かれている。
「人間は四角い画面を持つことで、はじめて余白を知ったのだ。
その余白というものから、はじめて風景をのぞいたらしい。」
市販の一般的な額は、細い木でできていて
ほとんど主張をしないつつましいものが多い。
反対に私が作る額は、主張が強く、中に入れるものの事は
あまり考えていないことが多い。
というよりも、額に合わせて中身を考えてもらっているような感じだ。
買ってくださる方々もそれを楽しんでいるように思える。
額は、ややこしい加工を必要とする家具類と比べると
パパッと作れる即興性が楽しい。
無垢材の額はお刺身のようなものだ。
その材料の一番おいしいところを見極めて
四角く調理する。
いや調理というか、お刺身だから
切って並べるだけに近いか。
オイルを塗って木目を味わう。
古材の額は下ごしらえが大変だ。
解体、ほこり取り、洗い。
長年のシワを刻み、この世から消えようとしていたジジババを
いまいちど最期の晴れ舞台に立たせる感じだ。
額という字には、「金額」というように
分量を示す意味もある
作った額には値段をつけなくてはならない。
額の額に悩む日々・・・。
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