てのひら。
先日夏休みで千葉方面に行った時のこと。
立ち寄った久留里という街の酒造の方が、
近所に伝統工芸の「雨城楊枝」を作っている人がいる、
というのでたずねてみました。
千葉県指定伝統工芸品・君津市指定無形文化財。
「現代の名工」と謳われる森光慶さんは御年87歳、ちょうどお昼寝から覚めたところで
私が、埼玉から来た家具屋です!と、耳元で大きな声で説明すると(森さんはお耳が遠い)うれしそうに仕事場を見学させてくれました。
恐縮しつつお邪魔した仕事場は8畳ほどの凝縮された空間に全てが揃っていて、
ただ広くて散らかし放題の我が工房とは雲泥の差でありました。
「人と同じことをしていてはダメだ」
勲章をもらったことについて、私の手を握りながらしきりに訴える言葉が
胸に響きました。そしてそのてのひらは厚く、黒く、力強い。
私が負けじと強く握り返すとニヤリと笑い、うなづく。
その笑顔がこの夏の一番の思い出となりました。
どうかいつまでもお元気で。
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コメント
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私も雨城の楊枝、ネットで調べてみてました。
‘たかが楊枝’だけど
いろんな種類があって、
しかもそれをひとりの職人が何十年も
つくり続けてるって・・・すごいなあと、
母親と感心しながらみました。
イサドさんがこの楊枝やさんを知ったのは偶然だったんですか?
だとしたらすごく幸運でしたねえ。
投稿: とだちえ | 2007年8月26日 (日) 21:29
いや偶然ではないです。
そういう所があるというのは知ってたんだけど
「近所ですよ」と言われなければ立ち寄らなかったと思う。
何事もそうなのかもしれないけど
まあいいやと思ってしまえば一生出逢わない人が
たぶんたくさんいるんだと思う。
投稿: イサド | 2007年8月27日 (月) 12:38