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「見よ ぼくら一銭五厘の旗」 花森安治


(前略)

さて ぼくらは もう一度

倉庫や 物置きや 机の引出しの隅から

おしまげられたり ねじれたりして

錆びついている〈民主々義〉を 探しだ

してきて 錆びをおとし 部品を集め

しっかり 組みたてる

民主々義の〈民〉は 庶民の民だ

ぼくらの暮しを なによりも第一にする

ということだ

ぼくらの暮しと 企業の利益とが ぶつ

かったら 企業を倒す ということだ

ぼくらの暮しと 政府の考え方が ぶつ

かったら 政府を倒す ということだ

それが ほんとうの〈民主々義〉だ

政府が 本当であろうとなかろうと

今度また ぼくらが うじゃじゃけて

見ているだけだったら

七十年代も また〈幻覚の時代〉になっ

てしまう

そうなったら 今度はもう おしまいだ

 

今度は どんなことがあっても

ぼくらは言う

困まることを はっきり言う

人間が 集まって暮すための ぎりぎり

の限界というものがある

ぼくらは 最近それを越えてしまった

それは テレビができた頃からか

新幹線が できた頃からか

電車をやめて 歩道橋をつけた頃からか

とにかく 限界をこえてしまった

ひとまず その限界まで戻ろう

戻らなければ 人間全体が おしまいだ

企業よ そんなにゼニをもうけて

どうしようというのだ

なんのために 生きているのだ

 

今度こそ ぼくらは言う

困まることを 困まるとはっきり言う

葉書だ 七円だ

ぼくらの代りは 一銭五厘のハガキで

来るのだそうだ

よろしい 一銭五厘が今は七円だ

七円のハガキに 困まることをはっきり

書いて出す 何通でも じぶんの言葉で

はっきり書く

お仕着せの言葉を 口うつしにくり返し

て ゾロゾロ歩くのは もうけっこう

ぼくらは 下手でも まずい字でも

じぶんの言葉で 困まります やめて下

さい とはっきり書く

七円のハガキに 何通でも書く

 

ぽくらは ぼくらの旗を立てる

ぼくらの旗は 借りてきた旗ではない

ぼくらの旗のいろは

赤ではない 黒ではない もちろん

白ではない 黄でも緑でも青でもない

ぼくらの旗は こじき旗だ

ぼろ布端布をつなぎ合せた 暮しの旗だ

ぼくらは 家ごとに その旗を 物干し

台や屋根に立てる

見よ

世界ではじめての ぼくら庶民の旗だ

ぼくら こんどは後へひかない

 

(「暮しの手帖」8号・第2世紀 昭和45年10月)


全文はこちらを。

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コメント

こりゃいいものを教えてもらった。
ありがとう。
しかし、チョンマゲ野郎やっつけるのは並じゃないと思うねえ。
思うけど、やんなきゃしょうがないんだろうな。

チョンマゲな。
手ごわいな。
イヤになるくらい。

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