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木目の宇宙。

201111_025

木工をやっていて何が、どこが好きなのかと聞かれれば、
木目が好きなのだと答える。
これは僕に限らず、木工をやっている人は大抵そうなのではないだろうか。

削ったり、抉ることで予想もしない木目が出てきたり
オイルを塗った瞬間にパッと木目が輝いたり。
面白い木目に出逢うと思わず仕事の手をとめて
しばらく見とれてしまうことがある。ぼーっと
木目の宇宙に吸い込まれている。そういうちょっとした
喜びのために木工をやっているようなところがある。

木工は陶芸や他の工芸と違って、表現において素材そのもののウエイトがとても高い。
もちろん形やデザイン、技術が及ぼす力もあるけれど、ほとんどは素材である木や
その木目で決まってしまう部分が多いように思う。
そういう点では、運命的な部分もあるけれど、その素材を手に入れること、
その素材と出逢うことも、その人の仕事の一部であり、才能であるともいえる。

知り合いに教えてもらい、青峰重倫さんの回顧展を見に行った。
初めて知った作家ですでに亡くなられているけれど、黒柿やローズウッド、
黒檀やブビンガなどのいわゆる銘木を使った迫力のある作品に触れてきた。
その中に薄い四角形をした黒柿の銘々皿というのがあった。
僕自身も黒柿で全く同じ形のものを作ったことがあって、面白いなと思った。
黒柿はもう木の素材自体が面白いので、形は極めてシンプルに
ならざるを得ない。必然的に同じ仕事を施すことになるのだろう。

木や木目は自然のもので、それを面白がったり珍重するのは人間の仕業である。
薪や炭にしかならないとされる木がある一方で、柱一本何千万円もする木もある。
あるいは、その美しさに気が付くことがなければ、どんな木も一緒であるともいえる。

地球上から珍しい面白い木目の木がどんどん減っていって、いつしか味気のない
木目のほとんど見えない木しか残っていない状況で、果たして削ったり組み立てたりする
楽しみはあるけれど、人間は木工をやりたいと思うだろうか。

(左上から時計回りで。ヒノキのトレイ。イチョウのお盆。タモのカッティングボード。栗のカッティングボード。タモ寄せ木の鍋敷き。すべて12日からの名古屋の展示に持って行きます。)

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