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お盆を彫っている。
彫っては研ぎ、研いでは彫る。
こんなに刃物を研ぐようになるなんて、昔の自分は想像もしていなかった。
研ぎというのは、砥石と、刃物と、自分の間に存在する問題だ。
きちんとすればきちんと切れ、いいかげんではいいかげんなままだ。
  
『飛騨』という冊子がある。家具メーカーの飛騨産業が発行しているものだが、
知り合いが時々送ってくれるので読んでいる。
手元にある11号は「でっち」がテーマで、木工職人を目指す若い「でっちどん」たちのことが紹介されている。
自分は職業訓練校に一年通っただけで、丁稚の経験はないが、
読んでいたらなんとなくその頃のことを思い出した。
  
朝早く学校に行くと、もうすでに誰かが研ぎ場で刃物を研いでいる。
自分はあまり研ぎが得意でなかった。
というより、研げているのかどうかもわからないで、なんとなく研いでいた。
それでも悔しさから一年やっているうちに、少しは研ぎの感覚をつかめるようになった。
この時の経験が20年後のいまになって活きている。
上手くなっているかどうかは別の話だが。

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