« 2016年5月 | トップページ | 2016年7月 »

「額と絵」 二人展

絵を描いて、生きている人がいる。
その事実にただ感服するだけの自分がいる。
絵を描く人はすごい。
その思いは、年をとるにつれますます深くなっていく。
それは彼らが絵筆という最小限の道具で世界を表現しているからだろうか。
いつの時代も画家は、その鋭い刃物の切っ先で私たちに鮮やかな断面を見せてくれる。
自分はポカンと口を開けてそれを眺めているだけだ。
 
 
今回の西さんとの二人展では、自分が作った額に合わせて西さんが絵を描いてくれることになった。
普通は、まず絵があって、それを額で装飾するのがいわゆる額装だ。
いや普通かどうかなんて自分には全然わからないけれど。
それとは逆の流れで、自分が勝手に作った額を、絵で飾ってもらうことで作品が生まれていく。
これは何というか、「絵装」とでもいうのか。あまりないパターンだとは思う。
西淑ファンには実に申し訳ないわがままなスタイルになってしまったけれど。
そんな贅沢をさせてもらいつつ、結局仕上がりは当日まで全く見えないという点では
一ファンとして何も変わりはないのだということを付け加えておきたい。
 
むしろ大切なのは、「絵を描く理由」のところにある気がする。
絵が出来上がった最後に額が来る、という予定調和ではなく、
まず額がある、ということから絵がスタートするということにこの展示の意味があるのだとしたら、
こんなにも静かでエキサイティングなことはないのではないかと・・・
(それは自分だけがうれしいのかもしれないけれど・・・)

カイコを育てている。飼育キットを購入したのだ。
子どもの頃からいろいろな生き物を飼ってきたが、カイコは初めてだ。
今は22匹すべて繭になり落ち着いているが、先週までは桑の葉を大量に与え続けねばならず、思っていた以上に大変だった。

カイコは不思議な生き物だ。
完全に家畜化された昆虫で、人間が管理しなければ生きることができない。
つまり野生には生息しないし、庭に放したとしても大して歩けもせず葉からも落ちてしまう。
成虫は飛ぶことができず、口もないため何も食べない。交尾して卵を産み一生を終わる。
ふと、極北という言葉が浮かんだ。極北の虫、カイコ。

「極北」という言葉は魅力的だ。
単に物理的な極地を指しているだけでなく、物事が極限に至った状態をも表現している。
その「極北」が昔から無性にかっこよかった。これが「極南」だとなんだかピンとこない。
他人と同じことをするのがなんとなく嫌で、いつしか人と違うことを探し目指すようになっていた自分にとって、
極北というのは一つの憧れだった。

「最果て」というのもそれに似ている。
若い頃は最果てを意味もなくただ目指すものだ。
自分も宗谷岬や犬吠崎などをバイクで旅した。新婚旅行は小笠原だった。
岬の灯台が建っているような場所はだいたい陸地の突端であり、
断崖絶壁になっていたりして、それ以上進むことができない。
いや本当はその先には海があって、さらにそのずっと向こうには異国の地が広がっているのであるが、
一応陸地の終点、ジ・エンドという意味で最果てなのだ。
最果てはたいてい観光地になっていて、展望台があったりする。みんな最果てが好きなのだ。
でも最近気づいたのは、最果てから遠くにポツンと見える町の灯かり、その良さもわかってきたことや、
すごく身近なところにも最果ては存在するということ。

えーと、何の話だったか。
つまり、カイコを眺めていたらそんなことを考えてしまった、ということだ。

掲載。

Vol21_hyoushi
 
マンションリノベーションをテーマにした扶桑社の雑誌『リライフプラス』、21号が発売です。
今号から季刊化されて、年4回発行!連載もネタが大変です・・・。
毎号地味に連載中の「イサドの森」ですが、今回は中板橋にある「1 ROOM COFFEE」さんの訪問レポートです。
イサドの作品を店内に飾っていただいているすてきなお店です。コーヒーを飲みにぜひお出かけ下さい。

201605_104

個展が終わって一週間以上経ったというのに、
まだ終わった感じがしないのは気のせいではない。
7月に西淑さんとの二人展が控えているからだ。
額を巡って頭の中がぐるぐる回り続けている・・・

« 2016年5月 | トップページ | 2016年7月 »

2022年12月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

最近のトラックバック

無料ブログはココログ