昨年から書きたかったんですが、なかなか忙しくて落ち着かなくて・・・・
やっとご紹介。
『住まいの考源楽』(ピエ・ブックス)という本が面白い。
以前展示会をやらせてもらったことのある代官山のギャラリー
「無垢里」のオーナーであり建築家でもある金田正夫さんの本。
全国各地に伝わる民家の工夫や知恵をフィールドワークとスケッチで紹介していたり、
さらにそうした環境作りの知恵を現代に生かす工夫などを紹介しています。
中でも面白かったのが、
伊勢湾答志島(とうしじま)の寝屋子(ねやこ)というシステムの話。
以下まるごと転載します。
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人間が集まって暮らす集落は、単なる住居の集合ではなく、深い人間の
結びつきによって構成されている。しかし今日ではその「集まって暮らす」
システムは失われつつある。昔の暮らしが残っていそうな地方の村では
過疎化が進み、当時の面影を偲ぶには難しい状況だが、ここ伊勢湾の
答志島では今でも昔ながらの住まい方が残っている。その中でもっとも
特徴的なのが「寝屋子」と呼ばれる習慣である。
百年以上前から続いているとされる寝屋子は、中学校を卒業した男の子が
生家を離れ、同年代の5~6人の男子と両親の揃った別の家で家族同様に
寝泊りする制度。日柄の良い日を選んで家具を運び、その家を寝屋と呼び、
その家の親を寝屋親(ねやおや)と呼ぶ。しかし寝屋子の男子は寝屋子で
寝泊りするだけで、日常の仕事は朝から自分の家に帰って仕事をして、夕
食を食べてから寝屋子に集まってくる。こうした生活は男子が結婚するまで
続けられ、その際寝屋親は仲人となり、結納でも上座で祝宴の盃をとる。
離島という閉ざされた環境の中で健全なコミュニティを保つということは、そ
の島の存続にも関わる重要なことであり、その形成過程でこのような制度が
生み出されたのではないかと思われ、この寝屋子があることで強力な同年
代の繋がりが生み出されていると考えられている。ともすると血縁のある親
戚同士や近所だけの付き合いになってしまいがちな人間関係を、全く関係
のない人間と寝屋親子関係を結ぶことによって、島内の人間関係は常に新
しい結びつきを生み出しているのであろう。
今日では島内の中学を卒業した後、鳥羽の高校へ進学するようになり、伝
統的な寝屋の機能は失われつつあるが、寝屋の親子関係は今でも必ず結ば
れている。それは寝屋子という制度が最も好ましい後継者教育の場と考えら
れていることや、地域の存続に不可欠だという意識を住民全員が共有してい
るからではないかと思われる。
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私はあまり知識もないのですが、昔の日本の特殊な地方には
少なからずこれに似たような制度があったのかもしれません。
それにしても・・・
同年代が夜に集まって一緒に寝るなんて
なんだかこの寝屋子は楽しそうだな~。
担当になった家の親は大変そうだけど・・・。
でもまあごはん作るわけじゃないからそうでもないのかな。
外観上は「集まって暮らして」いるけれど、
実は全然バラバラだったりする今の住宅事情。
一人っ子が多いマンションなんかで、この寝屋子やってみたら
けっこう面白そうな気もしますが。無理か?!(笑)
やっぱり社会の制度として不可欠だったからこそ
機能していた制度のような気がします。
他にもいろいろ、
ご興味のある方はぜひご一読を。
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